日は態々のお招きを頂き本当に有難うございます。
お聞き頂く前に簡単に琵琶のお話をしておきたいと思います。
まず、「楽器」でございますが、
一般的にはササン朝ペルシャの時代(2〜7世紀)バルバットという楽器が、
シルクロードを経て中国に伝わりビバと呼ばれるようになり、
それが奈良時代に日本に持ち帰られたといわれています。
正倉院に当時の琵琶がそのまま残されているのは皆様よくご存知の通りでございます。
一方、西ヨーロッパ・西アジアに伝わったバルバットそのものはなくなりましたが、
それが型を変えリュートやギター・ウードとなって残っております。
何れにしましても千数百年を経てほぼ原型のまま東の果てのわが国に現存し、
日本の心を代表する楽器として世界の人々の注目を集めているのも、
思えば不思議な感じがいたします。
さて、持ち帰られた琵琶は管弦(雅楽)に使われる楽琵琶として用いられましたが、
前後して楽器を小型化し仏教の法具として布教に使われるようになり、
また、一方では平曲(平家物語)の平家琵琶、島津日新公が作らせた「薩摩琵琶」等となり、
それぞれ大きさは多少違いますが構造・型はほぼ原型のまま伝えられ、
現在「四絃四柱」「五絃五柱」の楽器が最も多く使われております。
また「語り」でございますが、
その旋律・リズムはこれも同じく中国から伝わった声明(お経)がその源流だといわれています。
それが仏教説話や平家物語の語りに取り込まれ、
そのエッセンスが現在にも受け継がれているわけでございます。
本日お聞き頂く「錦心流琵琶」は、
さき程ふれました島津公が家臣の士気の鼓舞と情操教育のため創した薩摩琵琶を、
明治時代永田錦心師が他の邦楽の要素を取り入れ
「新しい薩摩琵琶」として創流、その流麗且つ豪放な芸風は多くの人々を魅了し、
不幸な戦争の時代を越え、近代琵琶として今日まで継承されているのでございます。
曲目・題材は所謂源平物・太平記物・戦国物・義士物・幕末物等が
好んで演奏されることが多いようでございます。
現在、流派としては錦心流・薩摩正派・錦・鶴田・筑前・平家琵琶等があり、
フリーの方々も含めて約千名の演奏家が全国で活躍しております。 |